以前から名作とうわさを聞いていた『黒蝶のサイケデリカ』を遊んでみました!結論から言いますとほの暗いシナリオにも希望がいくらかあって。光が水底に差し込むようなストーリーが非常に良かったです!
ストーリー
序盤のあらすじ

ゲームをスタートすると、画面にはバスの車内ような画像が映し出されます。何人かの男性の話声が聞こえてくるのですが、どうも穏やかではない様子…何を話しているのか聞き取ろうにも、音が途切れ途切れで状況はほとんどわかりません。
…という状況の中、突然の破壊音。そして画面はブラックアウト。

気付くと「私」は、古びた洋館の中に一人倒れています。
記憶を失い、ここに来た経緯も、「私」が誰なのかもわからない中、館の中にいる化け物に襲われたところを一人の少年に助けられます。彼もまた、「私」と同じように、記憶をなくしているとのこと。

その後合流する、同じ状況の数人の少年たち。化け物と対峙したときに突然現れた、不思議な銃。それぞれが持っているスマホに届く、「万華鏡の欠片を集めろ」等の謎めいた指令。

彼らは自分たちの身の安全のため、共同生活をしながら、元の世界に変えるために行動を始めます。名前すら思い出せないため、各自が泊まる部屋の名前を、仮の呼び名として。
全体としてはサスペンス色の強く、シリアスで暗い・重い内容のストーリーです。ショートエピソードでは、日常のほっこりする話なども用意されているので全体のバランスは良いですが、どちらかというと暗いお話がお好きな方のほうがハマる作品だと思います!
ゲームシステム
フローチャート

ゲーム内にはフローチャートが用意されており、スタートから各エンドまでの「メインエピソード」と、それらの枝葉にはつながっていない完全独立の「ショートエピソード」の二種類のエピソードで構成されています。

メインエピソードを進めていくと、途中でフローチャート画面にほっぽり出されることがありますが、次のエピソード解放条件を満たせば先に進めるようになります。エピソードの解放には、「黒蝶狩り」で得られるポイントの消費が必要なものも。
ストーリーの途中でフローチャートを呼びだして、違うエピソードへ移ることも可能です。
好感度システムはなし

オトメイトさんのゲームでは、選択肢が表れた際に、相手のキャラクターの気に入る行動やセリフを選ぶと好感度が上がり、それがシナリオ分岐に影響する「好感度システム」が搭載されていることが多いです。
…が、この『黒蝶のサイケデリカ』では好感度システムは採用されていません。物語の分岐は、選択肢とエピソードやエンディングの解放状況などで決まっていきます。
黒蝶狩り

メインエピソード中にミニゲームが発生します。
画面奥から迫りくる蝶を撃ち落としていくゲームで、スコアが良ければよいほど多くのポイントがもらえます。ここで得られたポイントは、エピソードの解放に使用できます。

操作は蝶をタッチしてロックオンし、「Shoot」ボタンをタッチするだけです。PS Vitaのタッチパネルが有効なため、指先で直感的に操作できます。簡単なので高得点を狙うのもよいですね、結果表示の時のボイスも変わりますし♪
途中でリタイアしても一定ポイント加算されるので、苦手ならリタイアしても大丈夫です。
スタート画面から何度でも遊べるので、ポイントが足りなくなっても繰り返し稼ぎに行けます。
主人公のボイス付き

筆者的に一番ありがたかったシステムがこれ!主人公ちゃんのボイス!!
さすがに地の文までは読んでくれませんでしたが、主人公ちゃんのセリフの部分は全部音声がついています。しかも声優が中原麻衣さんというキャスティングで、絶大な安定感で心地よく聞けます!!
オートプレイモードにして、しょっちゅう主人公のセリフを見逃してしまいプレイバックする筆者には、主人公ちゃんの声がついているのが大変ありがたいのです。
キャラクター別感想
キャラクター別の攻略感想です。ある程度のネタバレを含んだ感想は「ネタバレ感想を読む」をクリックすると開きます。感想はクリアしたら順次追加していきます。
緋影(ひかげ)
物言いがまっすぐすぎて反感を買うことも多いですが、論理的に話を進めてまとめ役のような役割に。紋白とは違う意味でマイペースで、堅物な印象です。
ネタバレ感想を読む
ゲームを始めたときから、センター(と言うと語弊がありますが…攻略キャラのメインってことで)なのに、なんで「影」なんだろうって思ってたんですよね。なんか悪役っぽいなー…って。髪の色も暗くて味方にしてはダークなデザインだなぁって…

正体わかって、やっぱりかぁ!って感じでしたw
緋影ルート入ってから、ウサギちゃんが過去を教えてくれたところで、「スマホのメッセージアプリのスタンプ機能が分からない」とか、「和食の好みがやけに古風」とか、いろいろヒントが出ていたなぁと気づきました。ただのキャラ付けじゃなくて、根拠のある趣味趣向なのが良いですよね。
唯一、幼馴染チームからは外れた人なんですけど、この人も悲しみに振り回されちゃった人なんですよね。そういう点では他のみんなと同じで。そこから立ち直れずに、歪んだ方向に進んで行ってしまった。人間的に弱かったのかもしれないですけど、彼にはそれしか拠り所がなかったんですよね。…はぁ、考えるほどに切ないです。
緋影エンドが最大限の救済だったとは思うんですけど…もっともっと救済してほしかった私としては、ショートエピソードのほのぼの感が救いです…
あー…バグはけっこう辛かったですタイミング的に…私は本編の展開より、そっちのほうで絶望していたかもしれません←
山都(やまと)
乱暴な印象が強いですが、面倒見の良い一面もある実は優しい人。でもいつもイライラして不機嫌そうです。
ネタバレ感想を読む自分のせいで、という気持ちを抱えながら10年生きるのは…辛いんですけど、彼にはそれしかできなかったんですよね。もうナツキはいないし、カズヤは目を覚まさないし。誰も許してくれる人がいない、誰も許してくれない。
好きだといえず、アイに意地悪ばかり言っている昔の自分と変わらないことを、山都本人が一番よくわかっているんだと思うんです。無意識にわかっているからこそ、意識して理解すると傷つくのが分かっていて、傷つくのが怖くて逃げ回ってしまう。真実に向き合うのを避けてしまう。

こういうタイプの人が、いざ向き合おうとするのって、本当に大変だと思うんです。勇気どころの話じゃなくて、根本的に恐怖心をなくしていかないと向き合えない。
対象キャラクターの中で唯一、化け物になったのも、きっとつまりはそういうことで。ぶっきらぼうに乱暴で強そうにふるまっていても、実はいちばん打たれ弱いんですよね。
…ああー。闇。闇深い。いやもう病み深いというか。山都エンドとか、ほかキャラと比較しても(生きてる人の中では)一番どうしようもなく辛かった…
鴉翅ルートもそうなんですけど、残された側の10年の歩みがしんどいんですよね。みんなボロボロすぎ…
タクヤエンドではそのあたり克服しはじめて、これから少しずつ成長していくのであろうことが見えたのは、希望を感じられました。でもこの人、すぐ依存症とかになっちゃうタイプの人だと思うので、アイちゃんがちゃんと支えてあげてほしいですね←
鴉翅(からすば)
悪い人ではなさそうですが、軽いノリとセクハラと嫌味とで山都との相性は最悪。本音は常に隠してるタイプ。
ネタバレ感想を読む「否定」の力が一番強いキャラクターだなぁと思いました。
身体も気も弱い自分を「否定」して、そうじゃない自分になれるように努力していく。
何もできず助けられなかった自分を「否定」して、立ち止まらず歩き出そうとする。
紅百合や山都と違って、一見前に進んでいるようにも見えるんですけど、歪んだ進み方をしていて「前」には歩けていないんですよね。

本当に前に進めているのなら、紅百合や山都にいちいち突っかからないと思うです。彼らの状態も受け入れた上で自分の行動をとれるはずなんですが、わざわざ絡みに行って「否定」する。弱い自分を否定しているから、弱いままの自分でいる彼らも否定しなくちゃいけなくなっちゃうんですよね。
でもこれって実は、過去から逃げ回っている山都と、あまり大差ないと思うんです。
逃げ回っているか、否定しているかの違いだけで。過去を受け入れられていないのは変わらない。
むしろ受け入れられないのに何とか足搔こうとしている分、鴉翅が一番痛々しくて見てらんないです…
そんななので、過去を忘れてるときの嫌な奴感は随一でしたね。緋影も歯に衣着せぬ物言いなのでカチンと来るときもあるんですけど、相手を屈服させようとする意図はあまりないのでまぁまぁ…って感じで。鴉翅の場合は明らかに「否定」しに来ているので、え?なんで私、喧嘩売られてます??ってなるw
山都ルートと併せて、過去を受け入れる力って大事なんだなぁと、やけに考えさせられたお話でした。現実世界にも通ずることですよね。肯定力だいじ。
鉤翅(かぎは)
おっとり優しい系頼れるお兄さん。落ち着いた印象で、安心感抜群です。
ネタバレ感想を読む物腰柔らかくて、紳士で優しいんですけど、総じて「ずるい」なぁと思った次第でした。
この人は割と、目的のために手段を選ばずに行動できる人ですよね。子供のころの結婚の約束なんかはその最たるもので、他の子たちもアイのことが好きだって知っていたから、抜駆けしたわけですよね。
沈みかけてる道を無理に渡ろうとしたのも、アイの希望をかなえたかったから。カズヤを助けに行ったのも、アイに助けにいかせるわけにもいかないし、いいところを見せたい気持ちも少しはあったのかもしれない。

そしてその結果…
ずるい。いろんな意味でずるい。
ほかの人の勝ち目がないじゃんか!
私はナツキエンドを見たかったですよ!!
鉤翅エンドの!未来予想図を!実現させてほしかった!!!!
救済を~…救済をください……
大団円エンドが、救済といえば救済なのかもしれないですけどね。あれは本編軸とはまた違う話になってるなぁという感想です。
とはいえ、じゃあナツキが生き返れば満足なのか?と問われれば、それはそれでなんか違うとわがままなことを思ってしまう。いろいろと(いい意味で)釈然としない鉤翅さんのシナリオでした。
紋白(もんしろ)
途中で合流する、マイペースな語り口の少年。パーソナルスペースの概念は持っているけど無視してる。つまり、近い。
ネタバレ感想を読むこういうぼーっとしてる感じで実は押しが強い人、好きです。大好き。お顔が可愛らしくてなお良し!今作の私の推しに決定いたしました!出番が少ないのが泣ける…
一番長い間、生死の間を彷徨って、一人で、気の遠くなるような長い時間を過ごしていたって、ちょっと想像しただけでも恐ろしいですね…そりゃあペンダントも真っ黒になりますよ。
そして引き返した理由になったリボンが、彼のお守りにもなっていた事実は、なんか皮肉ですよね。
そんなしんどい展開の人なんですけど…!紋白・カズヤルートもかなりしんどいしなんで一緒に幸せになってくれようとしないのよと思うんですけど!!!

ちょっとここからは現実(?)逃避ですが、とにかくスキンシップが多いのが紋白シナリオの良いところかと←
ぴとっと紅百合にくっついている紋白さん。
一緒の布団で寝ちゃう紋白さん。
おまじないしちゃう紋白さん。
…ああ、可愛い。
スキンシップの多さでは鴉翅も負けてはいなかったんですが、鴉翅は何というか…発言がセクハラ親父みたいであまり癒しにはならなかったんですよね←
その点、紋白はピュアッピュアですから、もう本当に最の高です!
だいぶ暗い展開の続く内容なので、紋白の可愛らしさは私の癒しでした…ありがとうございました。
紅百合(べにゆり)
本作の主人公。かわいい。
ネタバレ感想を読むこの手の内容の主人公は、得てして「光」になりやすいですよね。
主人公自身が輝ける光で、対象キャラクターたちの闇を払って救っていく感じの展開が多い気がするんです。恋愛系の話だと、それをとっかかりにラブ展開に持っていきやすいんでしょうね。
その点、今作の主人公はダメですよね。過去を引きずってるし、無意識に忘れたがっているし、引きずってる割には受け入れられてないし、間違いもいっぱいする。
でも、いい意味でダメだなぁって思うんです。このダメさが、彼女を人間らしくしているんだろうと。
人間らしい弱さ、人間らしい迷い、人間らしい間違い。それらは全部悪い事じゃなくて、当たり前に通ってくることなんですよね。そこから、それを受け入れたうえで、自分がどうしていきたいかっていうのが問題なわけで。
ヒーロータイプの主人公が好きな人にはきっと物足りないと思います。でも私は等身大の人間として描かれている「紅百合」という主人公に、愛着を持てました。
ウサギ
「館の主」の使いとして、いろいろとサポートしてくれる不思議な少女。かわいい。
ネタバレ感想を読むただただ見ているしかできない存在というのも、辛いですよね…お兄ちゃんと幸せになってほしい;;
ここではほかのルートを見て思ったことを書いていきます。
とりあえずさ、万華鏡を作った人と、蝶のヘアピンを売った行商人が犯人ってことでOK?
この作品はミステリーではなくサスペンスなので、すべての真相が解明されるわけじゃないのはわかってるんですけど、この辺りの設定が気になるところですよね…
あとは絵本の存在。あれはどういう経緯で作られたものなのか。
会話の中で、行商人がサイケデリカについて「死後の世界である」旨を説明するシーンがありました。絵本のサイケデリカでは暗喩の形で直接的に明言されたわけではありませんでしたが、死後の世界のことを指していると思って差し支えないでしょう。
ということは、行商人は絵本の制作にかかわっている可能性がある?それとも製作者と関係のある人なのか…??
いやでも絵本を読んでいたのは緋影で、ずいぶん前の話ですから、現代でヘアピンを売っているのはじゃあなんでだろうと。
大体、ヘアピンに万華鏡の欠片が入っていて、それをアイに持たせるために売ったのだとしたら。行商人の目的はいったい何だったのか。万華鏡の完成??何のメリットがあって?
…と、疑問が尽きないのですが、きっといろいろ設定があるのでしょう←
とても楽しめた作品だったので、灰鷹もそのうちやります♪